すべての疲労は脳が原因 -書評
『疲労』についての基礎知識が身に付く一冊
普段から疲れていると感じている人には、悩みの解消に繋がるかも?
前略 日々の業務に励むサラリーマンの皆さま
激務に追われる毎日に肉体、精神ともにお疲れなのではないのでしょうか。
慢性的な疲労感に悩まされながらも、疲れが取れないのは仕方がないこととして諦めてしまっているのではないですか?
そんなあなたに朗報です。
この本には、食べるだけで疲労を軽減する食品や、科学的な根拠に基づいた人間が休息ゼロで活動し続ける方法、などが書かれています。
――というのは嘘ですが。
『疲労』が起こるメカニズムや、疲労の解消方法について詳しく書かれているので、この本を読めば『疲労』に関する知識が身につくこと必至です。
健康管理においては、知ってると知らないとで変わって来ることってたくさんあると思うので、例えば、体調が悪いのはあるビタミンが特に不足していたためであったり、頭痛に悩まされていると思ったらそれは肩こりが原因で整骨院にいったら解消したりなどetc...
可能であれば、そういった知識は日常生活を送る中でどこかで仕入れておきたいし、間違った知識は、早めに正したいですよね。
所で、『疲労』について言えば、次の項目が疲れを取る方法として浮かびませんか?
・運動でストレスを発散すると疲れもすっきりととれる
・ニンニク料理、ウナギ、焼肉、栄養ドリンクで疲れは軽減する
・休日に人気の温泉地でたっぷりお風呂に入って、疲れをとる
・残業の疲れは、楽しくお酒を飲めばリセットできる
これ、すべて疲労回復の効果はないそうです。
上記の項目がなぜ疲労回復に効果がないのかは、本の中に書かれています。
また、著者の梶本修身先生は、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授で、2003年に発足された「疲労定量化及び抗疲労食薬プロジェクト」のプロジェクトリーダーを務めていたという経歴を持つ『疲労』に関するスペシャリストです。
疲労について悩みを抱えているのであれば、一度読んでみてはいかがでしょうか。
下記、各章の大見出しです。
- 疲労の原因は脳にあり
- 疲労の原因物質とは
- 日常的な疲労の原因はいびきにあった
- 科学で判明した脳疲労を改善する食事成分
- 「ゆらぎ」のある生活で脳疲労を軽減する
- 脳疲労を軽減するためにワーキングメモリを鍛える
感想
以下、この本を読んで知ったこととその感想です。
①疲労は脳が疲れることによって起こる。
激しい運動をした時や長時間デスクワークに取り組んだ後に、“疲れた”と感じることがあると思うが、この“疲れた”という感覚が生じる原因は両者とも同じで、『自立神経の中枢が酷使され疲労すること』によって起こっている。自律神経は、体を正常に安定した状態を保つために24時間心臓や、横隔膜などのあらゆる器官や組織に指令を出し続けており、激しい運動や脳疲労によってこの調整機能が酷使されると、脳が体を休ませようと信号を送り『疲労』を感じる。つまり、疲労と言う感覚は、脳からの「生体アラーム」ということ。
『自立神経の中枢が酷使される』というのが具体的にどのような事かと言えば、自立神経が酸化ストレスにより傷つけられている状況のことを言う。体内にある「活性酸素」が仕事や運動といった活動により大量に発生すると(活性酸素自体は呼吸だけでも1~2%発生する体に常にあるもの)、体をつくる細胞を酸化し傷つけてしまう。特に、ミトコンドリアが傷つきエネルギー不足になると、自立神経は大きな影響を受ける。
終業後にスポーツクラブで運動することは、返って疲労を蓄積させる。これは、日中の仕事で疲労している自律神経を、運動をすることによって更に疲労させてしまうから。疲労感が取れているように感じるのは、運動によりエンドルフィンやカンナビノイドといった脳内麻薬と呼ばれる物質が疲労感をマスキングしているだけ。――ただ、個人的には、運動は体内の脂肪や老廃物を体の外に出し新陳代謝や血行を良くする効果や、筋力を維持して心肺機能を向上する効果があるので、一概に悪いとは言えないのでは?と思った。要は、休日の脳疲労が蓄積してないときに運動をすれば良いという話なのだとは思う。
②いびきをかく人は疲れやすい。
いびきをかく人は、睡眠中に気道が狭くなっており、そのことで呼吸が著しく障害され、必要量の空気を肺に送り込むのに大きなエネルギーを必要としている。そのため、自律神経が普通の人よりも酷使され、睡眠により自律神経をしっかりと休めることが出来ない。
ただし、現在「疲労回復CPAP」といういびき・睡眠時無呼吸症候群を改善するための、睡眠中の呼吸を補助する機械があり、実際にこの機器を使用して睡眠の質や、疲労を改善に効果があることが確認されている。気になった人は、お医者さんに行きましょう。
睡眠により疲れをとるのは、睡眠中は大脳や自立神経の働きが抑えられるため、疲労回復因子FRの働きが疲労因子FFを上回り、活性酸素の発生とそれによる細胞の損傷を抑えられるから(疲労回復因子FRや、疲労因子FFが詳しく知りたい人は、本作を読むかネットで調べてください)。
つまり、疲労回復に睡眠はとても重要だということ。昨今、日本人の平均時間は年々短くなる傾向にあり、「睡眠不足症候群」という睡眠障害が問題となっているので、疲れがとれないと悩む人で特に睡眠時間が短い人は、一度、普段どれくらい睡眠時間が取れているのか見直してみるべきだと言えます。
③疲労回復に効果がある食品はイミダペプチド。
巷で売られている栄養ドリンクに疲労回復の根拠はなく、カフェインなどの覚醒作用のある成分が、疲労が軽くなったように感じさせているだけ。
実際に、科学的に認められた疲労回復に効果のある食品は「イミダペプチド」。
イミダペプチドとは、鶏の胸肉に多く含まれる成分。なぜ、イミダペプチドに抗疲労効果があるのかと言えば、渡り鳥などは長時間に渡って羽を動かし飛び続ける必要があるから。また、カツオなどの回遊魚にもイミダペプチドは多く含まれている。
鶏の胸肉は、低カロリー高タンパクで筋トレに進められる食品としても有名なので、偉く優秀な食べ物だなと思った。
他にも、クエン酸が疲労回復には効果がある。
④「ゆらぎ」が疲労回復に効果がある。
広い草原、川のせせらぎ、森林、自然環境の多い所では、体が癒されると感じるのは、「ゆらぎ」の効果によるもの。
一日中似たような環境にいると、緊張やストレスで交換神経が活発になりがちなのに対して、風景の変化や、時折吹き抜ける風などがある自然環境では、副交感神経が優位になり、ストレスや疲労が軽減される。
つまりは、「ゆらぎ」のある空間では、サーカディアン・リズムが整い、自律神経の疲労を抑えることが出来る。
以上が、この本を読んで私が特に興味関心を持った内容になります。
他にも疲労が起こるメカニズムやそれに付随して起こる諸問題について詳しく書かれているので、興味のある方はご自身でチェックを。
追記
この本、続編の「すべての疲労は脳が原因2<超実践変>」も発売されています。